展覧会概要・構成

展覧会概要

このたび神奈川県立近代美術館 鎌倉・鎌倉別館では「現代への扉 実験工房展 戦後芸術を切り拓く」を開催いたします。
 「実験工房」(Jikken Kōbō/Experimental Workshop)は、1951年に結成された若手芸術家たちの集まりです。第二次大戦後、社会全体が復興への道を歩み出した頃、美術、音楽、照明、文学などジャンルを超えたグループとして生まれたのが「実験工房」です。メンバーには造形作家の大辻清司[1923-2001]、北代省三[1921-2001]、駒井哲郎[1920-1976]、福島秀子[1927-1997]、山口勝弘[1928-]、作曲家の佐藤慶次郎[1927-2009]、鈴木博義[1931-2006]、武満徹[1930-1996]、福島和夫[1930-]、湯浅譲二[1929-]、ピアニストの園田高弘[1928-2004]、詩人・評論家の秋山邦晴[1929‐1996]、さらに照明家の今井直次[1928-]、エンジニアの山崎英夫[1920‐1979]が名を連ねました。「実験工房」の名付け親は詩人・美術批評家の瀧口修造でした。
グループとしての活動がおおむね終了する1957年頃までの間、造形、音楽のみならずダンス、演劇、映画といったさまざまなジャンルと結びついた創作活動を行い、そこには常に実験の精神が貫かれていました。実験工房の功績は戦後芸術の先駆として今日、改めて評価すべきものがあります。
 本展は、従来の枠組みではとらえることの難しかった実験工房の全貌を、総合的にとらえて紹介する公立美術館としては初めての展覧会です。その多彩な活動の全振幅を検証し、近年とみに高まりつつある再評価の基盤に、確かな一歩を積み重ねたいと思います。


展覧会構成

本展では、彼らの幅広い活動の軌跡を、絵画、立体、映像、写真のほか、楽譜や公演プログラムなど関連資料約400点の展示を通して検証し、1940年代後半から1960年代の造形作家の代表作に加え、自転車のPR用に製作された映画『銀輪』(監督:松本俊夫、音楽:武満徹、美術:北代省三、山口勝弘)や近年発見された未公開映像資料の上映を行い、メンバー合作の「オート・スライド」(1953年)のうち、フィルムの失われた映像の再現を試みます。


第Ⅰ章
「前夜」では、七燿会展やCIEライブラリーなどを取り上げ、メンバーが出会い交流を深めていく中で創作された造形作品や資料を展示します。

第Ⅱ章
「実験工房の時代」では、コンサート、舞台、映画など多岐にわたる活動の軌跡を、新資料や未公開の映像とともに振り返ります。

第Ⅲ章
「1960年代へ」では、グループとしての活動を終える1957年頃から1970年までのメンバーの足跡をたどり、実験工房が同時代の芸術に及ぼした影響について再検証します。