2013年2月7日木曜日

私の音楽は、実験工房の体験なくしては、ありえなかった。 ―武満徹




<実験工房>は、いまでこそそれに類したグループ活動もさほど珍しくもないが、結成の当時は、一般には、かなり奇異なものに映ったようだ。日本の文化状況は閉鎖的なものだったし、ジャンルを超えた結びつきに、誰しもが疑わしげな、それでいて好奇に充ちた目を向けていた。私たちの結束を支えた大きな力は、言うまでもなく、詩人瀧口修造の存在だった。海藤日出男氏の発案が契機となって<実験工房>は生まれたが、実際の表現活動以上に、瀧口氏から与えられる創造の啓示に、私たちは一様に精神を開き、その結束も深めたのだった。いまはそれがとても懐かしいものとして思いかえされる。

 私の音楽は、<実験工房>の体験なくしては、ありえなかった。真に精神の師匠(パトロン)と呼べる存在に出会えたこと、そして、互いに切磋琢磨しあえる友たちに巡り合えたことの幸運を思わずにはいられない。

 

                  『第11回オマージュ瀧口修造 実験工房と瀧口修造』
                   (199178-31日、佐谷画廊)カタログより引用





 

学芸員から>>《遮られない休息―瀧口修造の詩による》など、貴重な直筆の楽譜も展示しています。
 




 
 

写真を撮影したのは北代省三。
写真ににうつっているのは、左から谷川俊太郎、秋山邦晴、武満徹、武満浅香。
 
「鎌倉散歩」は、「作曲家訪問 武満徹」(文:谷川俊太郎、『シンフォニー』19576月号)のために撮影されました。
 当時、武満徹・浅香夫妻が住んでいた鎌倉を、谷川俊太郎、秋山邦晴、北代省三が訪ね、5人で段葛、鶴岡八幡宮、神奈川県立近代美術館、江ノ島をめぐり、武満の自宅へと
向かいました。
 
 
 この作品は鎌倉館の1階でみることができます。
 
                                       北代省三「鎌倉散歩」より 1957年 デジタル上映
                                       川崎市岡本太郎美術館蔵 映像制作:Todoroki_lob